マーケティングミックスによるマーケティング実行戦略|構成要素と活用ポイントを解説

コラム
マーケティング

マーケティングミックスとは、マーケティング戦略におけるさまざまなフレームワークやツールなどを組み合わることで、企業が市場に提供する商品やサービスを最適にマッチングすることで、消費者に魅力的なコミュニケーションを行うため使用されます。

マーケティング戦略の一連の流れのなかでは、環境分析や基本戦略を出したのちに行われる、実行戦略の策定の段階に位置します。

今回は、マーケティングミックスの構成要素や、戦略を実行・分析する方法を解説し、成功事例についても紹介します。

マーケティングの基礎を押さえ、市場で成功するためのアプローチについて理解を深めましょう。

マーケティングミックスとは?

マーケティングミックスはマーケティング戦略の下流工程であり、ここまでに策定した基本戦略を具体化し、実行するための重要な段階です。

この段階では、マーケティングフレームワークやツールなどの複数の要素を組み合わせ、顧客の理想的な購買行動を促進するためのアプローチを練り上げます。

複数の要素を組み合わせることからこの戦略を「マーケティングミックス」と呼び、これにより、企業は市場において自社のサービスや商品をどのように打ち出し、どのような価値を顧客に届けていくかを整理することが可能になります。

マーケティング戦略の流れ

マーケティング戦略の流れにおいて、マーケティングミックスの位置づけを確認しましょう。

  1. 環境分析
    外部分析と内部分析を行うことで自社が置かれている状況を正しく把握し、より効果的なマーケティング戦略を立案できる。
  2. 基本戦略
    事業の成長が見込める市場や参入できる市場を選定するためSTP分析を行い、基本戦略を策定する。
  3. 実行戦略(マーケティングミックス)の策定
    基本戦略をベースに決定したターゲット市場に対するアプローチ方法など、具体的な実行戦略を策定する。おもに4P・4C分析を用いる。
  4. 施策の実行・評価
    策定したマーケティングミックスに基づくマーケティング施策を実行し、結果を評価する。評価によってはマーケティング戦略の見直しを行う。

マーケティング戦略策定については以下の記事で詳しく解説しています。

マーケティング戦略策定手順や役立つフレームワークを詳しく解説

なお、マーケティングミックスでおもに用いられる4P・4Cの解説は次章以降で行います。

企業視点|マーケティングミックスの4要素「4P」

企業視点|マーケティングミックスの4要素「4P」

マーケティングミックスでは、おもに「4P」あるいは「4C」というフレームワークが用いられます。まずは、企業視点で分析する「4P」について解説します。

製品/サービス・Product

4Pの1つめのPである「Product」は、顧客に提供する製品やサービスのことです。

その製品やサービスのコンセプトを決定し、ブランディングイメージや生産方法、魅力的なパッケージやネーミング、流通経路など、あらゆる方面から戦略の方向性を決定します。

これは、マーケティングミックスのなかでも最も重要な要素です。

価格・Price

2つめのPである「Price」は、自社が生産する製品やサービスの提供価格です。支払方法や割引なども勘案します。

価格は、高すぎても低すぎても継続的な利益は得られません。市場内での相場はもちろん、コストや自社のシェア、競合他社との競争力なども加味する必要があります。

また、顧客が抱く製品の価値を意識して設定することも大切です。

流通・Place

3つめのPである「Place」は、製品・サービスの流通ルートや販売場所を指します。

「広範囲に」「限定的に」「独占的に」「複数チャネル(経路)で」など、製品・サービスの特徴に合わせた流通ルート・販売場所を選択します。

流通ルートが多いとより幅広い顧客に製品を届けられる一方で、コストがかかるという問題もあるため、コスト管理の考え方も重要です。

売上や製品・ブランドの向上にも直結するため、製品・サービス、価格と同様に重要な要素となっています。

プロモーション・Promotion

4つめのPである「Promotion」は、CMやWeb広告などの販促活動全般を指します。

どれだけ優れた製品があっても、顧客に製品を知ってもらわなければ購入にはつながりません。

プロモーション手法はマス広告、ホームページ、SNS、キャンペーンなど多岐にわたるため、ターゲットとなる顧客に届くよう訴求ポイントを絞って販促することが重要です。

このように、4Pでは「どのような価値を」「どのくらいの価格で」「どのような形で提供するのか」「どのような販促を行うのか」という視点から製品・サービスを分析します。

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顧客視点|マーケティングミックスの4要素「4C」

マーケティングミックスでは、企業からの視点で分析する「4P」のほかに、顧客の視点に立って考える「4C」が使われることもあります。

競争が激化した近年において、自社の商品・サービスを多くの人に購入してもらうためには、顧客目線の概念が必要となったため定義されたのが「4C」です。

ここでは、4Cのそれぞれの要素について解説します。

価値・Customer Value

「Customer Value」は、顧客が製品やサービスに対して顧客が得られる価値のことで、ここには製品・サービスとしての性能だけではなく、デザインやブランドイメージなども含まれます。

4Pの「Product(製品・サービス)」と対になる要素であり、どれだけ良い製品・サービスを提供しても顧客が欲しいと思わなければ購入されないため、顧客のニーズをしっかり把握することが求められます。

経費・Cost

「Cost」は顧客が製品やサービスに対して支払う経費のことで、顧客が納得できる価値提供の基準となり、4Pの「Price(価格)」と対になる要素です。

この経費には金銭だけでなく、顧客が製品やサービスを購入するまでに負担した作業も含まれます。

経費に見合う価値が製品にあるかを考えるため、Product(製品・サービス)やCustomer Value(価値)とも関わるものです。

利便性・Convenience

「Convenience」は製品・サービスの入手方法や店舗へのアクセスのしやすさ、ネットショップでの購入のしやすさや決済方法などのことで、4Pの「Place(流通)」と対になる要素です。

販売するエリアや販売方法など、顧客にとって購入のしやすさを検討します。

売り手における流通は買い手における利便性と密接に関係しているため、流通チャネルの最適化に取り組むことが必要です。

コミュニケーション・Communication

「Communication」は自社と顧客との双方向のコミュニケーションのことで、4Pの「Promotion(プロモーション)」と対になる要素です。

マーケティング戦略の成功のためには、製品やサービスを提供するだけの一方向にとどまらず、顧客の声に耳を傾けるなど、双方向のコミュニケーションを取る必要があります。

代表的な手段は、コールセンターの設置やイベントの開催、SNSなどです。

マーケティングミックスにおいては、4Pと4Cの2つを軸として活用することで、新商品の発売や既存商品の売上維持、ブラッシュアップにも役立てられます。

4Pと4Cの関係性

4Pと4Cは、いずれもマーケティングにおいて商品を扱う際のアプローチを考えるためのフレームワークです。

4Pが企業側の視点から商品を扱うためのフレームワークであるのに対し、4Cは顧客側の視点から商品を扱うためのフレームワークであるという違いがあります。

しかし、4Pと4Cは以下のように、相互に関連するものです。

  • Product(製品・サービス)とCustomer Value(価値)
  • Price(価格)とCost(経費)
  • Place(流通)とConvenience(利便性)

つまり、製品・サービスの機能や品質を強化することで、顧客にとって価値ある製品を提供することができるでしょう。

同時に、顧客が求めるコスト、便利さ、コミュニケーションを提供することで、顧客が製品を選択する際の決定要因を確立することが可能です。

そのため、4Pと4Cのどちらかを優先するのではなく、バランスをとることが重要となります。それにより、企業と顧客両方の観点でマーケティング戦略を立案できるのです。

マーケティングミックスの課題と活用ポイント

マーケティングミックスの課題と活用ポイント

ここでは、マーケティングミックスを活用する際の3つのポイントについて解説します。

自社の立ち位置を明確にしておく

マーケティングミックスを活用するには、まずは「STP分析」を行う必要があります。

STP分析とは、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット市場を決定する)、Positioning(自社の立ち位置を明らかにする)の略語であり、市場分析の基本的な手法の一つです。

セグメンテーションによって市場を細かく分割し、ターゲティングからターゲットにすべき市場を決め、ポジショニングによって競合他社に対する自社の立ち位置を明らかにすることで、効果的なマーケティング戦略を構築することができます。

STP分析によって自社の立ち位置が明らかにならないと、正確な4P分析を行えません。したがって、STP分析は非常に重要なポイントとなるでしょう。

要素の整合性とバランスをとる

マーケティング戦略を実現するには、4Pの各要素に整合性・一貫性を持たせることが重要です。4Pの各要素の整合性が取れていない場合、売上につながりません。

4Pの整合性・一貫性が取れているかどうかは、顧客が「誰に対し、どのような理由をもって購入するのか」を考慮しながらチェックします。

こうすることで、4Pの一貫性の欠如を発見しやすくなるでしょう。また、4Pだけではなく、4Cも考慮すると、より抜けのない製品・サービスになります。

サービス業の場合は、4P分析にPeople(人)、Process(プロセス)、Physical Evidence(物的証拠)を加えた7P分析を使うとよいでしょう。

People(人)は接客スタッフの習熟度やサービスのクオリティなどが、Process(プロセス)は、そのサービスをどのような過程で提供するかが該当します。

Physical Evidence(物的証拠)では、目に見えない価値を測定して明確な証拠として残すことが該当します。例えば、予備校なら志望校への合格者数、保険会社の顧客満足度などがそれにあたるでしょう。

マーケティングミックスは検証を重ねて決定する

マーケティングミックスの要素は相互に作用しているため、どれか一つでも要素を変えた場合、ほかの要素にも影響が出てしまうため、見直す必要がでてきます。

しかし、ビジネスの方針は簡単に変更できません。特に、製品・価格・流通の3要素は簡単には変更できないため、テストマーケティングを行いながら、各要素を決めることが重要なポイントとなります。

マーケティングミックスは「何をやるか」という具体的な戦略を決める、戦略立案フェーズにあります。

そのため、STP分析や4P・4Cなどを取り入れ、細部まで分析・調査する必要がありますが、それらを自社のリソースのみで行えるとは限りません。

その際は、専門家であるマーケティング戦略のコンサルティングに相談してみるのも一案です。

マーケティング戦略コンサルティングについては以下の記事で詳しく解説しています。

マーケティング戦略コンサルティングの役割と活用法・注意点

マーケティングミックスの成功事例3選

マーケティングミックスの成功事例3選

ここではマーケティングミックスの成功事例として、Apple、ユニクロ、ニトリの3社の4Pについて紹介します。

Apple

製品/サービス

Apple では、iPhoneやMacBookなどのハードウェア製品、およびApple Mmusicなどのデジタルコンテンツサービスの提供に加え、サポートやプライバシー保護にも注力しています。

価格

iPhoneの最新モデルは約12万円~、Macの最安モデルは約13万円~と他社と比べて高価格(2023年4月現在)です。デジタルコンテンツはお試しが可能な月額課金のフリーミアムモデルで提供しています。

※フリーミアムモデルとは、基本サービスは無料提供し、機能拡大で課金するモデル。

流通

オフラインはApple Store(自社店舗)や家電量販店で、オンラインでは公式サイトやAmazonなど、多角的に販路を展開しています。

プロモーション

「革新性」や「ハイセンス」などブランドの価値を発信しています。

Appleのマーケティングミックスは、要素間の整合性・相乗効果がしっかりと取れている点が優れています。

ユニクロ

製品/サービス

ユニクロは、ヒートテック、エアリズム、ブラトップなど、動きやすさとシルエットにこだわった商品デザインを強みとしています。

価格

企画から調達・生産・販売までの行程を自社で行っているため、ファストファッションよりは高めである一方、アパレルブランドよりは手頃な価格を実現しています。

流通

主要駅をはじめ郊外の街道沿いなどに出店し、海外にも進出中です。オンラインストアも展開しているため、買い手のさまざまなシチュエーションに対応しています。

プロモーション

折込チラシ、SNS、テレビCMなど幅広く展開。子供から高齢者まで幅広い年代をモデルに起用することで、老若男女に愛されるファッションブランドのイメージが定着しています。

ユニクロは、機能性とデザイン性を兼ね備えたファッションを、価格を抑えて販売することで、幅広い世代の顧客を獲得しています。

ニトリ

製品/サービス

ニトリでは、誰にでも購入しやすい安価な値段設定がなされ、顧客の欲求に応えて新商品の開発にも意欲的に取り組んでいます。スキレット鍋や滑らないハンガーなど、大ヒット商品もあり、「お、ねだん以上。」のキャッチコピーを体現しているといえるでしょう。

価格

企画からデザイン、製造、物流、販売などを一貫して自社で行い、低コスト化を実現。商品によっては100円ショップよりもコストパフォーマンスが良いケースもあることから、主婦や学生層を中心に人気を博しています。

流通

実店舗とオンラインストアでの販売がメインとしています。一方で、郊外には大型店舗を出店。家具、カーテン、雑貨など、すべてが一つの店舗内でそろうという利便性を実現しています。

プロモーション

寝室であればベッドフレームから枕カバーまで、トータルコーディネートができる強みを持ち、郊外の大型店舗では、ショールームにコーディネート例を展示。どのような部屋づくりができるのかを表現しています。

また、リーマンショック後は年収200~500万円の顧客層が中心だったところを、2013年頃からは年収800万円ほどの層を中心にターゲットを転換しました。

メイン顧客である30代、40代だけではなく、20代や50代以上まで受け入れられているのが特徴です。

以上のように、ここで紹介した3社に共通しているのは、4P分析をしっかり行っており、各要素の整合性も取れているという点です。

マーケティングミックスにおいて4P分析を行う際は、各要素に整合性・一貫性があるかをしっかり確認しましょう。

まとめ

マーケティングミックスは、マーケティング戦略において、基本戦略を具体化し、実行するための重要な段階を担います。企業側の視点で考える4Pと、顧客側の視点で考える4Cの2つを軸として、バランス良く活用することが重要です。

しかしながら、そのすべてを社内で賄うのは大変な場合もあるでしょう。その際は専門家のコンサルティングに相談するのもひとつです。

弊社サイカは、マーケティングにおけるデータサイエンス領域で10年以上のコンサルティング経験を持ち、独自に開発したMMM(マーケッティング・ミックス・モデリング)サービスを250社以上に提供してきました。弊社特有の統計解析力と戦略設計力を掛け合わせ、データを起点に戦略設計を行うことで、成果向上に向けた確証あるマーケティング戦略の実行を支援します。

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