回帰分析で売上予測するには?基本と手順・注意点を解説

コラム
データ分析統計

統計的手法を用いて、過去のデータから将来の売上を予測することを「売上予測」と呼びます。売上予測を分析すれば、経営やマーケティングに役立つため、マーケティング担当者にとっては理解しておきたい知識の一つといえるでしょう。

そこで今回は、売上予測の手法の一つである「回帰分析」について、基本知識から手順、注意点までを徹底解説します。適切な回帰分析によって売上予測の精度を高め、企業の戦略策定やビジネスの最適化に役立てましょう。

回帰分析とは

回帰分析は、因果関係の推定や予測などに活用される統計手法です。回帰分析を行うことで、結果の要素に対してどの要素が影響を与えているかを理解できます。

これにより導き出された数式は、まだ手元にない未知のデータについて予測を立てるのに役立ちます。

ここではまず、回帰分析の概要と種類について説明します。

回帰分析は数値の関係性を明らかにする統計手法

回帰分析では、要素を目的変数(結果)と説明変数(要因)に分け、これらの関係をモデル化し、関係性を数値で表します。

回帰分析は、マーケティング施策の効果や外部要因の影響予測など、幅広い用途で使用されるものです。売上予測における具体的な利用例・目的としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 広告宣伝を行う際の媒体ごとの広告宣伝効果の見極め
  • クーポン発行による需要喚起がどの程度あったかの分析

ある販売促進施策とその目的となる売上などの相関関係を分析することで、施策決定に関する判断の最適化に役立ちます。

回帰分析の種類

回帰分析にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。

  • 単回帰分析:目的変数と説明変数がそれぞれ1つしかない回帰分析
  • 重回帰分析:目的変数が1つなのに対し説明変数を2つ以上使う回帰分析
  • ロジスティクス回帰分析:目的変数が2値変数である重回帰分析

「単回帰分析」は、要素同士の関係性をシンプルに分析したい場合に使われる、回帰分析の基本的な手法の一つです。ただし、1つの説明変数しか用いないため、扱える対象には限界があります。

「重回帰分析」は、単回帰分析よりも説明変数の数を増やせるため、より複雑な関係をモデル化できます。売上予測で、よく用いられている手法です。例えば、説明変数を「売上」と1つ設定するのに対して、説明変数は「広告出稿量」「商品価格」「キャンペーンの有無」などから、いくつかの要素を選定して分析します。

「ロジスティクス回帰分析」は、例えば目的変数が「性別」「配偶者の有無」などといった、2値で表せる変数の場合に利用される手法です。複数の要素が与える影響を測定する点では重回帰分析と同様ですが、目的変数は2値変数でなければいけません。2値のデータを扱う分、確率に変換するなど分析の工程が少々複雑になります。

回帰分析による売上予測手順

回帰分析による売上予測手順

回帰分析による売上予測の手順を、3STEPに分けて解説します。

STEP1 分析に必要なデータを収集する

回帰分析を行うには、まずはどの要素とどの要素の関連を知りたいか、明確にする必要があります。すなわち、予測したい目的変数と、その変数に影響を与えると考えられる説明変数の選定です。

売上予測の場合、年間売上高や利益、来店客数などから目的変数を決定します。その後、その値に関係しそうな説明変数を選定して、データを収集しましょう。

例えば、目的変数を飲食店の売上高とした場合、座席数や店舗前の通行量、最寄駅の乗降者数、駅から店までの距離などが説明変数になり得ます。

マーケティングに関わるデータや収集プロセスについて詳しく知りたい方は是非下記の記事をご覧ください。
データ収集のベストプラクティス:クライアントとの伴走で得た知見をご紹介

STEP2 回帰分析を行う

収集したデータから、Excelの分析機能や専用の統計ソフトを利用して回帰分析を行います。回帰分析を実施すると、目的変数に対する説明変数の与える影響がどのようなものなのか明らかになります。

ただし、あらかじめある程度の知識がある方、または統計解析を得意とするプログラミング言語(R言語やPythonなど)になじみのある方でなければ、専用ソフトがあっても分析は難しいかもしれません。そのため、社内の知見のある人材に相談するか、場合によってはプロに委託して分析してもらうとよいでしょう。

STEP3 分析結果を検証する

予測精度を測るために、分析結果の妥当性を評価します。また、各評価指標を確認し、必要に応じて新たな評価指標の追加や変更など行います。その後、あらためてモデル構築を行い、評価と見直しの工程を繰り返して予測モデルの精度を向上させます。

このSTEPを経て納得のいく数値になったところで、ようやく予測モデルの完成です。さらに、分析を定期的に行い改善すれば、より精度が高い結果を得られるようになるでしょう。

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回帰分析による売上予測の注意点

回帰分析の実施には、正しい知識が必要です。分析の知見なしに実施すると正しい結果が得られず、その後の判断を誤ることにもつながりかねません。

そこで以下では、回帰分析で売上予測する際の注意点を解説します。

データ選びは慎重に行う

まずは、適切なデータを選ぶことが非常に重要です。データが不足していたり、誤ったデータが用いられたりすると、正確な分析結果は得られません。

ただし、重回帰分析に投入できる説明変数の数には制限があります。関連しそうだからと、変数をむやみに多く選べば良いわけではありません。また、投入した説明変数同士の相関性が高すぎると、分析結果が不安定になり、結果が正しく導かれないという問題も生じます。

このように、回帰分析におけるデータ選びは、知識なしで簡単にできるものとはいえません。分析に関する知見が少ない場合は、データ選びの時点で誤ってしまうケースもあるでしょう。正しい分析結果をより確実に得るためには、プロに委託するのがおすすめです。

回帰分析を活用できない場合がある

回帰分析は、単純な比例関係を仮定しているモデルであり、要素同士の関係性が複雑な場合は使用できません。例えば、市場や消費者の行動が予測不能な場合などは、回帰分析による売上予測に限界があります。

また、回帰分析はあくまで相関関係を分析して予測するものであり、因果関係を証明するものではないことに注意が必要です。因果関係が証明されれば、原因が結果に直接影響を与えているといえますが、相関関係は一方の値が変化する際にもう一方の値が変化する関係でしかないため、因果関係があるとは限りません。

データ分析においては因果関係がより重要であるため、回帰分析結果を重視するのは良いとしても、信頼しすぎるのは避けたほうがよいでしょう。

まとめ

適切に回帰分析を行い、予測精度を高めることで、企業の戦略策定やビジネスの最適化に役立てることができます。回帰分析を用いて売上予測を行う場合、慎重なデータ選びと結果の検証が必要です。

特に、変数の選択を誤るといくら分析を行っても正しい結果が得られないため、十分に気を付けましょう。社内に知見のある人材がいない場合は、分析を外部委託するのもおすすめです。

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