マーケティングにおける予測モデル:予測分析手法と活用事例を分かりやすく解説

コラム
データサイエンスマーケティング

マーケティングは、不確実性のある領域だと言われることが多いです。何がうまくいくかを確実に知っている人はいません。マーケティング担当者は仮説を立て、検証するための指標(KPI)などを設定します。そして、その効果検証をもとに、調整や最適化を行います。

従来のマーケティングやプランニングは、仮説に基づいて実験を行い、うまくいかないことを止め、うまくいっていることを最適化し、試行錯誤で成果を出していくのです。

現在ではマーケティング担当者が、様々なデータを活用することで、「うまくいくかもしれない」潜在的な機会を、より高い精度と信頼性の予測モデリングを使用することができます。

この記事では、予測モデリングとは何か、マーケティングにおいてどの活用方法があるか、そしてどのように始められればいいのかについて説明します。

予測モデルとは

予測モデルとは、過去のデータを分析し、将来のイベントや現象を予測するために使用される数学的なモデルのことです。予測モデルは、特定のデータセットに対して最も正確な予測を生成することを目的としています。

予測モデルは、機械学習や統計学などの手法を用いて開発されます。これらの手法によって、データセット内のパターンや関係性が発見され、将来のイベントや現象を予測するためのモデルが構築されます。

例えば、販売データを使用して、将来の需要を予測するモデルを開発することができます。この場合、販売履歴から需要の季節性やトレンドを分析し、将来の需要を予測することができます。同様に、市場動向や顧客の行動パターンなどのデータを使用して、将来のトレンドや顧客の需要を予測することも可能です。

予測モデルは、ビジネスやマーケティングの多くの領域で使用されています。例えば、需要予測や販売予測、リスク評価、商品の品質管理、マーケティングキャンペーンの最適化など、様々な用途があります。しかし、予測モデルはあくまで予測であり、必ずしも正確な結果を保証するものではありません。そのため、適切なデータの選択やモデルの開発には十分な注意が必要です。

マーケティングにおける予測モデル

マーケティングにおける予測モデルは、機械学習や統計学などの手法を使用して、過去のデータから学習し、将来のイベントや現象を予測するための数学的なモデルのことです。消費者の行動や広告施策の効果を予測し、マーケティング活動の最適化とROI向上に活用することができます。

例えば、予測モデルを用いて「物価の○○%の上昇に合わせて、将来の売上が○○%下がる」という予測が立てられます。

マーケティングで使用される予測分析の種類

マーケティングで使用される予測モデルには、いくつかありますが、主要なものを紹介します。それぞれに特定の用途があるのと、特定のデータを使用しています。

傾向(プロペンシティ)スコア分析

傾向スコア分析は、マーケティング施策による影響を正確に測定するために使用される手法の1つです。

例えば、ある企業があるマーケティング施策を行った場合に、その施策が売上にどのような影響を与えたのかを測定する場合を考えます。介入群と非介入群を完全に同じ条件で分けて比較することは難しく、マーケティング施策以外の要因の影響を受けてしまう可能性が高いです。

そこで、傾向スコア分析を活用することで、介入群と非介入群のデータの性質を近づけ、より正しい比較を行うことができます。例えば、あるマーケティング施策を実施したA群とB群があったときに、A群の人たちに特定の偏りがある場合それを排除して、マーケティング施策の効果をより正しく予測する際に使用するものです。

傾向スコア分析は、新製品の導入や価格設定の変更など、様々な施策の評価に活用されます。

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析は、あるユーザーのデモグラフィック情報などをもとに、ユーザーの取りうる行動を予測するための基本的な手法です。

具体的には、ある顧客の属性(年齢、性別、前に購入した商品やとった行動など)を基に、その顧客が実際に商品を購入するかどうかを確率的に予測し、どのような属性が特に重要であるかを明らかにすることができます。

ロジスティック回帰は、顧客の購買確率やチャーン確率の予測などに用いることができます。

協調フィルタリング

協調フィルタリングは、あるユーザーが過去に評価したアイテムの履歴をもとに、そのユーザーが好きそうなアイテムを推薦するための手法です。また、類似する嗜好を持つ他のユーザーのアイテム評価を参照し、推薦するアイテムを決定することもできます。

具体的には、あるユーザーが評価したアイテムの傾向を分析し、その傾向が類似する他のユーザーを探します。そして、その他のユーザーに、まだ評価していないアイテムを推薦することができます。

協調フィルタリングは、映画や音楽などの娯楽分野だけでなく、商品の購入履歴やウェブサイトの閲覧履歴など、様々な分野で使用されています。

時系列分析

時系列分析は、時間の経過に伴うデータの変化を分析する手法です。様々な時系列分析手法がありますが、代表的な手法としては、自己回帰和分移動平均 (ARIMA) モデルがあります。

時系列分析では、過去のデータに基づいて未来のトレンドを予測することもできます。この予測は、特に需要予測として知られており、商品の需要量を予測することで、在庫や生産計画を最適化することができます。

また時系列分析は、売上や顧客数などのKPIの変化を分析し、マーケティング施策の効果を評価することにも役立ちます。さらに、季節変動やイベントなど、外的要因が重要な影響を与える場合にも、時系列分析を用いることができます。

マーケティングにおける予測分析が重要な理由

予測分析は、マーケティングにおける不確実性を低減し、施策や予算のより正確な最適化に繋がるため、マーケティングにおいて重要です。

予測モデルから得られる情報により、マーケティング担当者はより効果的で、顧客の嗜好に基づいたマーケティング活動を行うことができ、より高いROIを実現することができます。

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マーケティングにおける予測分析の課題

マーケティングにおける予測分析の主な課題は2つあります。

データの質

予測モデリングではデータの質が大きな役割を果たします。データの質が低ければ、間違った予測や事実の誤認につながる可能が高まります。

予測分析の文脈で、データの質の低さというのは、(入手可能かどうかも含めて)正確さと量のことを示します。例えば、ある期間の売上データが入手可能ですが、半分ぐらいの店舗からはデータがないといった場合、時系列分析を使って未来の売上予測しようと思っても、結果の正確性が低いでしょう。

企業は、データの収集と管理に対して、CRM、Google Analyticsのようなアクセス解析ツール、店頭、広告代理店などからのデータを含めて、幅広いアプローチを取った方が良いです。

コストと時間

予測モデリングツールは、基本的に専門家でないと使いづらくて、コストがかかる場合があります。また、予測分析がツールでできますが、データの可視化が出来ないため、社内に説明するためには別途、作業か他のツールを使わなければなりません。コスト意識の高い場合や予算が厳しい企業の場合は、社内にデータ分析専門チームの教育や外部のサービス導入で、予測モデル構築に投資することができないかもしれません。

また、高い精度の予測モデルが完成して、実際にマーケティング活動に有効活用できるまでに、かなりの時間がかかる場合もあるため、経営陣の理解と賛同がないと、推進することが難しい取り組みです。企業が目前の問題に対する迅速な解決策を求めている場合、予測モデリングは適さない可能性が高いです。

マーケティングにおける予測モデリングの活用事例

予測モデリングは、マーケティングにおいて様々な活用に活用することができます。以下にいくつかの活用事例を紹介します。

マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)

MMMは、マーケティングに用いられる統計分析手法で、売上やその他のKPIと、あらゆるマーケティング施策とのデータ(出稿量や出稿金額など)の関係性を時系列で分析します。ROI(費用対効果)を最大化するためのマーケティング施策の最適な組み合わせと予算配分を特定するのがMMMの目的です。

MMMの分析結果に基づき、マーケティング担当者が広告施策の最適化や予算の再配分による増分売上を予測することができます。

MMMは、マーケティング担当者が過去のデータに基づいて未来の意思決定を行うための予測モデルです。分析結果からマーケティング予算の効率の良い施策に再配分することによって売上予測が可能です。

レコメンデーションエンジン

レコメンデーションエンジンは、ユーザーの過去の行動や好みを分析して、その情報をもとに、彼らが興味を持つと思われる商品やサービスを予測する仕組みです。

例えば、あるオンラインストアで過去にカメラを購入したユーザーには、関連性の高いカメラアクセサリーをレコメンドすることができます。

成功したeコマースサイト(Amazonや楽天など)やストリーミングサービス(NetflixやSpotifyなど)のほとんどが、協調フィルタリングを使って、ユーザーに関連する商品、ドラマや曲などを推薦するエキスパートになっています。

LTV(顧客生涯価値)予測

LTV(顧客生涯価値)予測は、企業が特定の顧客から得られる収益の見込みを評価するための分析手法です。

LTV予測は、過去の顧客行動(平均的な購入額、購入頻度、購入周期、取引を続ける期間などの指標)を分析することによって、新しい顧客に対して将来的な収益を予測するために使用されます。

LTV予測を使用することで、企業は顧客の優先度を決定し、顧客獲得コストとLTVのバランスをとりながら、より戦略的にマーケティング活動を計画することができます。

チャーン(離反)予測

チャーン(離反)予測とは、企業がある顧客が今後離反する可能性が高いか低いかを評価するための分析手法です。

この予測には、過去の顧客行動、傾向、嗜好などのデータを使用し、将来的な行動を予測します。離反予測は、企業が顧客獲得コストを抑え、既存の顧客を維持するために、ターゲットとなる顧客をより正確に特定するのに役立ちます。

また、企業は、離反する可能性が高い顧客を特定し、適切なリテンション施策を実施することで、顧客ロイヤルティを向上させることができます。

マーケティングにおける予測モデリングを始めよう

マーケティング担当者にとっては、予測モデリングを活用することにより、顧客行動やビジネス成果に影響する要素を理解し、マーケティングの不確実性を減らし、より正確な戦略や戦術の実現に役立てることが分かりました。

しかし、予測モデルをマーケティング活動に組み込むには、データや機械学習や統計学などに関する専門知識(あるいはかなりのコストと時間)が必要のため、実現が難しいです。

弊社サイカは、マーケティングにおけるデータサイエンス領域で10年以上のコンサルティング経験をもって、独自に開発したテクノロジーとアルゴリズムによるMMMサービスを、大手企業を中心に250社以上に提供してきました。MMM以外にも、専門のコンサルタントとデータサイエンティストのチームがクライアント企業のニーズと目的に応じて、マーケティングデータ分析により課題解決を支援しています。

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また、MMMサービスの導入とマーケティングにおける予測分析について相談したい方は是非お問い合わせください。

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