ユニ・チャーム株式会社

Q. 担当業務を教えて下さい

私が所属するグローバルマーケティング統括本部 eUC推進部は、インターネットのeビジネスでユニ・チャームを引っ張って行くことをミッションとして作られた部門です。もともとはオウンドメディアを中心に担当していた部門ですが、2019年1月からペイドメディアを統合して、トリプルメディアの連携を強めています。

私はeUC推進部内のメディアグループで、ベビー用紙おむつ「ムーニー」のオフライン広告とデジタル広告のプランニングや検証を担当しています。

Q. 市場の特徴や貴社の状況を教えて下さい

ベビー用紙おむつは、お客様にとって大切な子供が身に着けるものです。また、消費財の中では単価が高く使用頻度も高い。そのため、お客様から高い品質を求められるのが1つの特徴ですが、ムーニーは製品テストを徹底的に行っていますので、製品力には自信があります。また別の特徴として、ベビー用の紙おむつは使用期間が3年と短いため、消費者の入れ替わりが激しく、常に新しいユーザーが市場に入ってくる構造になっています。どんどん市場に流入してくる新しい消費者から、安心して使える紙おむつとして自社を選んでもらうために、ベビー用紙おむつのマーケティングにおいてはブランディングが非常に重要です。

また近年の傾向として、子育て世帯の夫婦は忙しいので、他の日用消費財と比べてネットでの購入率が高く、ネット購入率の伸びも早い、という特徴も見られます。ネット購入ではムーニーを指名して買ってもらわねばならないため、ブランディングを通して純粋想起を獲得することが重要になります。こうしたブランドの知覚イメージを築く重要性は、ベビー用紙おむつ市場の特徴であり、難しさでもあると思います。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

広告施策のROI検証に課題を感じていました。広告出稿の選択肢が増え、消費者が様々な広告に日々触れるようになったことで、消費者の態度変容も従来のようにテレビCMだけでは収まらなくなってきています。そうした現状に対応するために組織変更を行い、ペイド・オウンド・アーンドのトリプルメディアを統合的に推進できる体制を作ったのですが、トリプルメディアを統合して様々な施策を展開する中で、各施策の効果を測ることが難しくなり、ROIが明確にはわかりにくくなりました。

ROIを測るにあたって、デジタル広告はまだ数字が取りやすいですが、オフライン広告のROIを測ることは特に難しいです。とりわけテレビCMはブランディングのチャネルとして依然として重要で、かつ一番広告費もかかるため、課題観が大きい領域です。テレビCMについて、ベースとなるタイムCMは、半期ごとに一括購入をするため固定費としての性質が強く、どの程度の量を持っておくべきか頭を悩ませるポイントです。

MMMをMAGELLAN(マゼラン)に変えた理由

Q. そうした課題を解決するために取り組んでいたことはありますか?

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の手法を用いた分析を行いました。分析を行った結果、15秒広告と30秒広告の効果性・効率性が明らかになり、デジタル広告とオフライン広告の費用対効果の違いもわかったので、やってよかったと思いました。

ただ、金銭的なコストが重かったことと、分析モデルを作るまでの打合せやデータ収集など、工数面のコストも重かったため、継続的に行っていくことは難しかったです。その点、MAGELLANなら、以前の方法と比べて金銭的なコストが抑えられますし、分析のスピード感も早いので、そこが良い点だと思います。

その他、MAGELLANを採用した大きな理由としては、「デジタル広告、オフライン広告を統合的に分析して効果を検証できる点」「タイムCMとスポットCMの出稿配分を最適化できる点」「分析結果を使ってマーケティング施策全体の予算配分を最適化できる点」がありました。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

まず、現時点ではまだ分析モデルの安定性に欠けるので、カスタマージャーニーの描き方やデータの選び方を最適化して、分析モデルの信頼性を向上させていきたいです。そして、現状では短期的な施策の効果予測をMAGELLANで行っていますが、将来的にはブランド価値を科学して数値化していけたら良いと思っています。

ブランド価値で結ばれる消費者との関係

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

最終的には、製品のブランド価値が貯まる構造を作っていくことが大事だと思います。製品力には自信があるので、それをうまく伝えることで、価値を感じていただき、お客様ご自身に満足していただくとともに、他のお客様にも推奨していただけるような、そういう関係をお客様とムーニーの間で継続してもらえるようなプロモーションを展開したいです。それは、今はもうオフライン広告だけではできないと思うので、トリプルメディアの連携を通して実現していきたいと思います。

ヤマキ株式会社

Q. 担当業務を教えて下さい

小澤様:家庭用事業部、業務用事業部、海外事業部という3つの事業部が社内にある中で、私は家庭用事業部と、広告や広報などのコミュニケーションを担当しています。

岡田様:家庭用事業部で、めんつゆや白だしといった液体調味料のカテゴリーを担当しています。業務としては、プロモーションを中心に、製品開発やPRまでマーケティング全般に幅広く携わっています。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

小澤様:統合型のマーケティングコミュニケーションを可視化したいという悩みを持っていました。 今回、MAGELLAN(マゼラン)の分析でフォーカスした割烹白だしというブランドは、2019年の秋まで5年連続で2桁成長しています。しかし当初、割烹白だしは、料理上手の方には重宝されていたものの、それ以外の方には「自分には使いこなせない」と思われてしまい、なかなか裾野が広がらない状態でした。

岡田様:白だしは、めんつゆや鍋つゆとは違ってまだまだ生活者に浸透しきっていない商品で、だからこそ成長する可能性のある市場だと思っています。白だしを使ったことがなかったり、一度使っても離脱してしまう理由は、やはり使い方がわからないためです。調味料は他の製品で代用がきくものなので、必ずしも白だしを使う必然性はないのかもしれません。その中で、やっぱり白だしは良いものだよね、白だしにしかできないことがたくさんあるよね、ということを伝えていくのは非常に難しいところです。

小澤様:そうした中、割烹白だし発売からちょうど20周年を迎えた4年前の出来事になりますが、ある大手流通のバイヤーさんから「あなたたちがマーケットを大きくしないでどうするの」と言われました。それが個人的なきっかけとなり、社内外の総力を結集してマーケット作りに邁進しようという計画を立ち上げました。

具体的には、一部の料理上手の方だけでなく、より広い方々に使ってもらえるように、テレビCMに笑福亭鶴瓶さん、駿河太郎さん親子を起用し、割烹白だし1:9で簡単にスープができる、という「スープ訴求」を始めました。このように割烹白だしの使い方を訴求することで大きな成長を得られましたが、訴求を変えて4年目に差し掛かるころ、急激に成長速度が落ちてきました。

その時に「これは次のステージに入らなければいけない」と思い、テレビCMのタレントとして新たに岡田将生さんを起用し、訴求するメニューもスープから一段上げて「さっと煮」という簡単に作れる煮物を考案してもらいました。さらに割烹白だしの容器も従来のガラス瓶からペットボトルに変え、次のステージに上がるための起爆剤として、広告タレントから訴求メニュー、製品まですべてを刷新しました。

またプロモーションの展開方法も見直し、テレビCMの影響は非常に大きいと思いつつ、テレビを見ない方々にももっと訴求できるように従来の方法から改善しました。テレビCMを投下する直前に記者会見を行い、記者会見の様子をSNSで流し、それがネットニュースに載り、そしてネットニュースに載った姿がテレビでもう一回流れる。その話題をまたSNSに流し、機が熟したところに広告を投下、といったように、あらゆるチャネルを活用して生活者と複合的なコミュニケーションを取るようにしました。その結果、テレビを見ない方々にも訴求することができ、5年連続2桁成長という成果を勝ち取ることができました。

もちろん担当者たちは皆それぞれに意図して施策を実行していました。しかし一方で、こうした複合的なマーケティングコミュニケーションは可視化することが難しく、それゆえに「なんかいろんなことをやって成功したね、わーい」のような状態で終わってしまうのは良くないな、と考えていました。成功した要因をしっかりと可視化して、レビューできるようにすることで、本当に統合型のマーケティングによって成功したのだ、と見えるようにしたい、そう悩んでいたときにMAGELLANに出会い、導入を決めました。

複雑化したマーケティングコミュニケーションをMAGELLANが可視化

Q. 実際にMAGELLANを導入して良かった点はどういったところでしょうか?

小澤様:先ほど申し上げた統合型マーケティングの中で実施したいろいろな施策の効果が可視化され、それぞれが成果にどれくらい貢献したかが見えた、というのがMAGELLANを導入した一番のメリットだと思います。テレビCMや容器のペットボトル化など、感覚的に効果が高いと捉えていた施策が分析結果でも非常に大きな貢献を示していて、感覚が数字で裏付けられました。

また、デジタル領域の施策についても成果への貢献度がしっかりと見えるようになり、その分析結果も踏まえて、それぞれの施策の広告費を増やしたとき、減らしたとき、維持したときに売上がどのように変化するかシミュレーションもできました。 こうした分析結果が次の施策につながってくると感じ、そこにも大きなメリットを感じます。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

小澤様:MAGELLANの分析を短期的に1回だけ行うのはもったいないと思っています。 次にまたマーケティングのアクションを起こした際に、今回と同様にMAGELLANで分析を行い、分析結果を2つ並べて比較できれば、より理解が深まるのではと考えています。

例えば、今回の割烹白だしでは容器のペットボトル化という特殊な要件がありましたが、それがなかった場合にどういうことになるのか、ということも比較することでわかることがあるはずです。それができれば、次のブランドを育成するときにも役立つかもしれません。

コミュニケーションの評価に悶絶しながら向き合う覚悟

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

岡田様:だしは世界に誇る食文化で、我々は100年以上そこに携わっていますが、鰹節を中心に、だしの美味しさ、良さ、をもっともっと伝えていきたいという思いがあります。

「だしってけっこう良いものだよね」という認識は恐らく皆さん持たれていると思いますが、じゃあ何が良いの、どう良いの、というところまでは意外と知られていないと思います。例えば、だしをきかせると塩分が少なくてもおいしくなったり、だしをきかせることで素材の味を活かしたり、素材の味をまとめることができたり、そういった良いところがだしにはあります。単純に「だしがおいしいから」ではなく、そういっただしの良さをきちんと伝えていきたいと考えています。その中で、最終的には「だしといえばヤマキ」「だし=ヤマキ」というブランドイメージを築けるように、プロモーションを行っていきたいと考えています。

小澤様:私はマーケターを30年以上やっていますが、昔を振り返ると、テレビCMが主役だった時代、私自身はテレビCMの目的は消費者に認知してもらうことであると信じて疑わなかったのですが、営業現場からは「広告に意味があるのか」「金ばかり使いやがって」と言われるような時代でした。恐らく現在は、デジタル領域の広告がそう思われているのではないかと思っています。

広告に対する「何の価値があるのか」「これだけお金をかける価値があるのか」という問いに解を示すためにも、お客様とのコミュニケーションをどのように評価していくか、ということがこれからもっと重要になっていくと考えていますし、その課題に日々悶絶しながら向き合っていかなければいけないと思っています。

ライオン株式会社

コモディティ化する市場であるがゆえに問われるマーケティングの実行力

Q. 担当業務を教えて下さい

永井様:ファブリックケア事業部という、洗剤、柔軟剤の開発、育成を担う部署に所属しています。私たちはビルディングスタッフという職務で、主にブランドの損益管理・販売戦略策定・製品育成などを行っています。私は柔軟剤ブランドの「ソフラン」を担当しており、新井は洗剤ブランドの「NANOX」を担当しています。

Q. 市場の特徴を教えて下さい

永井様:私たちが扱っている商品はいわゆる日用品です。市場に商品が非常に多く、お客様にとって商品の機能の差異性がわかりにくいという特徴があります。その中でいかに自社のブランドに価値を感じていただき、選んでいただけるかが重要となっています。コモディティ化する市場がゆえに、マーケティングの実行力が問われると考えています。そこがこの業界のマーケティングの難しさであり、またおもしろいところでもあると思っています。

プロモーション施策が多様化する中、各施策の効果が正しくわからなかった

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

永井様:各プロモーション施策の効果を正確に把握することに課題を抱えていました。近年、お客様の価値観や行動は多様化しています。従来は圧倒的にテレビCMの影響が大きかったのですが、デジタルネイティブな生活者も増えており、近年はテレビCMだけでは成果につながらなくなってきています。そのため、現在はオンライン広告など様々な媒体を使いながら統合的にお客様にアプローチしています。しかし、施策が多様化する中、各施策がどのくらい成果につながっているのかを可視化できずにいました。

新井様:マーケティングの4P分析でいうと、店頭の配荷率(Place)や価格(Price)でコンバージョンが上がるというのは現状のデータソースでも入手できます。ただ、プロモーション(Promotion)がどのように寄与しているかがわかっていませんでした。これまでは、各施策の評価は各担当者の経験値や感覚値に委ねられていました。予算配分においても過去の踏襲で判断している点が多く、これで正しいのか不安な状態でした。MAGELLAN(マゼラン)によって効果を可視化でき、予算配分も根拠を持って判断することができるようになったので、とても助かっています。

数値的根拠を持って判断・説明ができるようになった

Q. MAGELLANをどのようにご活用されているのでしょうか?

永井様:MAGELLANによる分析を開始して3期経ちますが、出てくるアウトプットに関して非常に高く評価しています。プロモーションの効果を可視化できないという、これまで抱えてきた悩みが解決でき、有効な取り組みになっています。特に、オンライン広告への予算の投じ方に関するMAGELLANの示唆はとても参考になりました。我々としても経験や知見が浅い部分だったので、そこに対する示唆が得られたことは非常に大きかったですね。

新井様:MAGELLANの分析結果は大きく2つの場面で活用しています。1つは3カ月に1度の効果可視化分析です。いわゆる販売データは我々も随時確認できますが、この定期報告がマーケティングの健康診断のようになっています。そして2つ目が先々の施策の予算配分策定のための分析です。限られた予算を効果的・効率的に運用する上で、MAGELLANの示唆を判断材料として活用しています。ちょうど現在は、来期の予算策定のための分析を実施しているところです。

※ 2020年9月現在

Q. その他、MAGELLANによる示唆を活用した事例はありますか?

新井様:MAGELLANの本来の使い方とは異なるかもしれませんが、予算変更時のトップライン変化のシミュレーションとして活用したこともあります。期中においても、損益の着地見込みに応じて予算が変更になることは往々にしてあると思います。その際、変更した場合としなかった場合で、生まれる利益に対してトップラインがどれだけ変わるのかをシミュレーションすることで、最終的にどちらがリスクとして大きいのかを数値的根拠を持って上長に説明することができました。

永井様:あのときは、概算予算が決まったタイミングでスピーディーに対応でき、結果として正しい判断をすることができて本当に良かったと思っています。

顧客洞察を続け、ユーザードリブンなマーケティングを目指す

Q. 今後、MAGELLANをどのように活用していきたいと考えていますか?

永井様:今後はMAGELLANの分析スパンをもっと短くし、日常的に活用できるようにしていきたいと考えています。競争環境が激しいため、競合の動きに対する打ち手をスピーディーに講じていけるようにしていきたいですね。

新井様:統合コミュニケーションにおいて、現在はテレビCMを基軸としてお客様の購買ファネルごとに適切な施策を行っていますが、コミュニケーション同士の関連性をもう少し構造化して見ていきたいと考えています。ファネルの横連携の関係性で相乗効果が出るようなものもあるはずなので、その関係性を明らかにしていきたいですね。

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

永井様:常にお客様を見ながら、あるべき商品・サービスを考えていくことです。顧客洞察を続け、そこから得られた仮説やあるいは世の中の潮流を鑑みて「こういう商品・サービスが必要なのではないか?」という発見を大事にしていきたいと考えています。その仮説の精度を上げるためには、従来の調査ももちろんですが、MAGELLANを使って仮説を定量的に実証することが重要です。そうすることで、マーケティングの理想像に近づくことができると思っています。

新井様:私の考えるマーケティングの理想像は、専門性を高めるという意味ではデータドリブンであることだと考えています。データドリブンはユーザードリブンだと解釈しています。最も起点となるのはエンドユーザーであり、そのエンドユーザーが商品購入・継続購入するまでに影響した興味関心・価値観などを明らかにしていきたいです。MAGELLANを使ってこれを洞察し、仮説を立てていきたいと考えています。お客様を包括的に理解するためにも、MAGELLANを活用してより理想のマーケティングができればと考えています。