マーケティング投資の効果測定、4本柱とは?追跡、実験、調査と数理モデリング:それぞれの長所と短所、有効活用できるシーンを解説

コラム
マーケティング

マーケティング領域では、広告施策やメディア出稿などに投下した費用の効果を測定する方法として、主に4つの方法があります。

  • トラッキング(追跡)
    • トラッキングでは、特定の顧客情報やコンバージョン、注文などと、媒体での広告接触情報を紐付ける仕組みで効果を測定します。Cookieを用いたウェブ上での行動追跡の他、URLにパラメーターを追加する、広告施策のための特設ウェブページ、電話番号の設置、クーポンコードでの管理などは、トラッキングによる測定方法の一例です。
  • 実験(A/Bテストなど)
    • 実験は名の通り、特定の広告に接触したグループと接触していないグループ、人や地域、時間(事前と事後)などの軸で比較し、広告の効果を測ることです。
  • アンケート調査
    • アンケート調査では、製品やサービスをどこで知ったかを顧客に聴取し、その回答を時系列で記録することで、マーケティング活動や広告施策による変化を把握できます。
  • 数理モデリング(MMMなど)
    • 数理モデリングは、観測データと統計学などを用いた分析モデルを組み合わせて、各媒体での広告宣伝費と、目標としている成果指標(コンバージョン、新規顧客、売上など)との関係性を数値で示す方法です。

これらのアプローチにはそれぞれ長所と短所があり、いずれも広告効果の測定において特別な役割を担っています。以下では、それぞれの方法を取り上げ、理想的な活用などについて考えます。

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広告効果測定方法その1:トラッキング(追跡)

効果測定方法としてトラッキングの目的は、各コンバージョンに対して、可能な限り細かい粒度で、特定の施策に貢献値を割り当てることです。

実験的なアプローチや数理モデリングと異なるのは、個々のコンバージョンを個別の媒体や広告施策に割り当てられる点です。

例えば、トラッキング方法で広告の効果を測定したら、獲得した101人目の顧客、その顧客がGoogleではなく、Facebook経由でコンバージョンしたという個別の事象を把握することを重要としています。

実験的なアプローチと数理モデリングの測定方法では、個々の顧客や個別のコンバージョン値が特定の媒体に割り当てられないので、ピンポイントに101人目の顧客について具体的なことは何とも言えません。こられの方法は、特定の媒体や広告施策で投下した予算、出稿量などと、コンバージョンの総量の間の関係性を推計しているからです。

トラッキングを用いたマーケティング効果を測定する仕組みの主なメリットは、一般的に設定するのが簡単で、社内にて理解されやすいことです。

しかし、重大な欠点もあります。

  • 一般的には、コンバージョンに近い施策(例えば、顧客が購入直前に目にする可能性が高い媒体)を過大評価する一方、顧客が最初に商品やサービスを知るきっかけになる媒体での広告が過小評価される傾向があります。
  • クーポンや割引コードを使用したトラッキングの場合は、お得な情報まとめサイトに配布されると、貴社の広告効果との紐付けが難しくなります。また、効果があったのが広告自体の影響なのか、クーポンや割引したことなのかを見分けるのが難しい場合もあります。
  • トラッキング方法による効果測定のもう1つの欠点は、追跡したコンバージョン値が広告による増分効果かどうか(因果関係)が推計し難い点です。広告に接触したことでCVが発生したのか、広告に接触していなくても発生するCVであったのか否かまでは分からないためです。

マーケティング活動上で広告を出稿する媒体が多くなると、これらの媒体にコンバージョン値を割り当てるのも複雑になるため、包括的に効果を測定するためには数理モデリング方法とカスタマージャーニーに関する仮定が必要になります。

広告効果測定方法その2:実験(A/Bテストなど)

実験は、テストグループとコントロールグループ(科学的な用語でいうと、治療群と対照群)を無作為に選ぶため、相関関係だけでなく、因果関係も推定することができます。

そのため、実験的なアプローチが増分の効果を推定するための標準的な方法となっています。「ブランドリフト調査」や「サーチリフト調査」というのも実験による効果測定の一種です。

例えば、テレビ広告の効果を測定したい場合、合理的な方法としては、無作為に選んだ地域の予算を削減し、その地域のコンバージョンにどのような影響があるかを見ることです。その地域のコンバージョンが減ったのは、テレビ広告の予算を削減したことが影響していると言えるでしょう。

広告の効果を測定するには少し単純すぎると思いますが、こういった実験が社内説明の際には理解されやすく、実行するのも比較的簡単であるためよく用いられる方法です。

実験的な方法は原則として有効ですが、以下の理由で実際にあまり上手くいかないことが多いのも事実です。

  • 同時に複数の施策や媒体の評価を行うことができません。
    実験を通じて、ある広告の効果を特定して適正に測定するため、他の広告媒体や施策における出稿量やクリエティブなど、実験の環境を同じにする必要があります。つまり、複数広告の効果を実験で検証することは非常に困難であり、実施したとしても結果の説明に悩むことになるでしょう。
  • より多くの人的資源が必要です。
    トラッキングや数理モデリングとは異なり、実験は広告主側の積極的な介入が必要です。例えば、地域を選択、予算を増減するなどの作業が必要です。一つ一つは難しいことではありませんが、広告代理店や媒体社などと細かな認識のすり合わせが必要になり、高い頻度で検証を行いたい場合はかなりの作業量を担当者が担うことになります。
  • 実験の実施期間によって結果が大きく変わる可能性があります。例えば、季節変動の激しい企業では、最も収益性の高い時期に実験を行うリスクも高いです。そのため、年末商戦の時期ではなく、6月などに実験を行うことがあります。果たして、6月の実験結果が、12月にどのぐらい応用できるのでしょうか。

広告施策の効果を測定するため、実験的な方法は有効だと言えるますが、条件があります。主には、何を検証したいのかが明確であること、そして、実験の実施環境がコントロールできることです。実験結果は環境要因次第で、様々な読み解き方ができます。実験を検討する段階で、関係者の認識を揃え、検証目的をしっかりと定めておくことが重要です。

広告効果測定方法その3:アンケート調査

マーケティング活動に効果があるかを確かめるには、顧客に貴社のプロダクトやサービスをなぜ選んだかを直接聞くのが最も早いです。

顧客に直接聞くため、購買プロセスを理解するための定性情報や文脈も豊富で、信頼性の高い情報が得られるとされています。

アンケート調査は、多くの対象者に同時に調査を行うことができるため短期間で評価を行うことが可能です。また、対象者条件にもよりますが比較的低コストでデータ化されたアウトプットを出せるというのも定量調査のメリットになります。一方で、アンケート調査は分析し解釈を加えてこそ意味のある手法となります。調査会社に委託したとしても、調査設計や解釈を加えるタイミングには広告主側の担当者にも一定の統計学や世論調査の知識、アンケート調査の経験測が必要になります。調査設計を誤ると、実態を導くことはできず、場合によってはアンケート結果を恣意的に利用してしまう可能性すらあります。

広告施策やマーケティング活動の評価を行う場合、広告出稿の前後など長期間に渡り複数回、同一の対象者にアンケートをとるパネル調査も有効とされています。時系列に沿った分析で変化を測ることが可能なためです。

しかし、パネル調査では、調査対象としている属性に合致する人を調査に耐え得る数、一定期間確保できるのかという点は調査設計の段階で注意が必要です。

広告効果測定方法その4:数理モデリング

最後に、広告効果測定における4つ目の柱となるのが、回帰分析を用いた数理モデリングという方法で、「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」とも呼ばれています。

トラッキング方法による広告効果測定みたいに観測データを基にしていますが、相関関係の数値化だけでなく、因果関係を推定することも目的としています。

回帰分析による広告効果の数理モデリングは、それぞれの広告媒体の出稿額と量、外部要因変数(季節要因など)、該当する成果指標(新規顧客、コンバージョン、販売個数や売上など)の時系列データを分析し、あらゆる広告媒体や個々の施策に投資した予算の成果への増分効果を算出します。

さらに、活用する数理モデルの種類によっては、広告出稿後の残存効果、媒体や施策横断で波及効果なども、直接効果以外の効果が測定できます。

しかし、ある企業のマーケティング活動の広告効果を精度高く測定できるモデルを構築するのが非常に複雑です。データサイエンスや統計学に関する深い専門知識の他、マーケティング担当者の描く仮説も重要となり、その仮説に基づく検証モデルを構築し、適合させる膨大な変数データを収集、整理しなければならいという課題があります。

経験豊富なデータサイエンティストのチームが時間をかけて精度の高い統計モデルを完成したとしても、変化(新しい広告施策の実施や市場環境の最新データを入力するなど)に応じてモデルを調整しないと精度が悪化するため、定期的に更新することが望ましいとされています。

まとめ:広告効果測定方法の適切な組み合わせは?

マーケティング投資を行う企業では、各企業のマーケティング状況に合わせてそれぞれの測定方法を上手く組み合わせることが重要です。そして、企業のマーケティング活動においては、「完璧な分析」ではなく、意思決定をする上で十分な精度で、皆が理解しやすく、タイムリーな情報であるかということが大切です。

ご紹介した4つの広告効果測定方法は、それぞれにメリット、デメリットが存在します。検証したい目的を明確にし、デメリットの影響を受けるか否か、複数の効果測定を組み合わせることでデメリットを解消できるかを検討する必要があります。そして何より、広告の効果測定においては、社内外の関係者の認識をすり合わせ、各ポイントで合意を得ながら進めることも非常に重要です。

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