テレビCMの波及効果はどのくらいあるのか?~統計分析で広告効果の核心に迫る~

コラム
データ分析マーケティング

昨今、テレビCMの効果可視化に関するテクノロジーやサービスが数多く出現しています。その結果、特定の成果指標に対するテレビCMの「直接効果」を測ることができるようになりました。しかし、テレビCMが他施策に与える「波及効果」を測ることのできるサービスは、今日でもまだ多くありません。

テレビCMの波及効果を可視化する有力な手法の1つが、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)です。MMMを用いることで、データサイエンスに基づき広告施策の「直接効果」と「波及効果」を定量化することができます。今回は、MMMを用いて実施したテレビCMの波及効果に関する分析結果の概要をご紹介します。

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テレビCMの波及効果は、どのくらい大きいのか?

株式会社サイカでは、2021年にフジテレビジョンとの共同で、テレビCMの広告効果に関する研究※1を実施しました。調査に用いたのはMMMツールMAGELLAN(マゼラン)と、国内約250のマーケティング事例から抽出された統計データです。

この研究から、残存効果やブランド蓄積効果など、テレビCMが持つ様々な効果の大きさが明らかとなりました。中でも波及効果に関しては下記のような発見を得られました。

– 総じてテレビCMは波及効果が大きい。顧客のカスタマージャーニーにおいて中間指標を押し上げる働きにより、最終的な成果量の向上に貢献している

– テレビCMの波及効果は、成果となる購買やコンバージョンがオンライン上で行われる場合(以下、オンライン成果のブランド)でも、実店舗などオフライン上で行われる場合(以下、オフライン成果のブランド)でも、大きいと言える

– オンライン成果のブランドでは、テレビCMの波及効果が指名検索数などの中間指標を押し上げる働きが見られた。中には、波及効果による成果が、テレビCMにより獲得された総成果のうち30~40%を占めるケースもあった

– オフライン成果のブランドでは、テレビCMの波及効果が店頭購買率などの中間指標を押し上げる働きが見られた。中には、波及効果による成果が、テレビCMにより獲得された総成果のうち60%以上に上るケースも見られた

※共同研究レポートの詳細はこちら

テレビCMの波及効果を定量化する分析手法とは?

この分析結果をどのように得ているのか、気になる方もいらっしゃるかと思います。ここで、MMMの分析手法を簡単にご紹介します。

MMM分析サービスのMAGELLANでは、重回帰分析の一種である「パス解析」という統計的手法を用います。これにより、広告施策の出稿量と成果量(販売数、WEBコンバージョン数等)の関係性(=相関)を数値化します。

ポイントは、広告施策から成果への影響だけではなく、ある広告施策から別の広告施策への相互影響も定量化している点です。顧客がテレビCMを見て、リスティング広告を経由し、最終的なWEBコンバージョンに繋がる、といったカスタマージャーニーにおいて想定されるパスを、テレビCMによる「波及効果」として定量化することができるのです。

テレビCMの波及効果を分析するメリットとは?

ここまでテレビCMの波及効果の大きさと分析手法について見てきました。ところで、テレビCMの波及効果を分析することにより、どのようなメリットを得られるのでしょうか。

最大のメリットは、テレビCMの波及効果まで含めた効果測定を実施することで、企業がより確信を持った意思決定をすることができるという点です。

ここで、実際の事例を2つご紹介します。

テレビCMの出稿継続の定量的根拠を見出した事例/サブスクリプションサービス企業

あるサブスクリプションサービス企業のプロモーション責任者は、「テレビCMの出稿継続に向けた上申材料が不足している」という課題を抱えていました。

従来は獲得広告を中心に実施してきたものの、先々の事業成長を見据えると認知広告が重要だと考えており、1年ほど前からテレビCMの出稿を開始しました。出稿を始めてからも事業成長は続いたため、プロモーション責任者や担当部門としてはテレビCMが成果に貢献しているという感覚がありました。

しかし、テレビCMの貢献が効果の見えやすい獲得広告に見かけ上吸収されてしまい、テレビCMの重要性が社内で過小評価されるという事態に陥りました。経営層に、出稿継続に向けた根拠を示していく必要が生じたのです。

そこでMMMツールのMAGELLANを用いて、テレビCMを始めとした各マーケティング施策の、過去1年間に渡る成果貢献度を可視化することとしました。分析の論点の1つが、獲得広告に与える波及効果までを含めたテレビCMの貢献度の可視化です。

分析の結果、成果とする新規契約数に対する貢献度は、動画広告やSNS施策など多様な施策がある中で、テレビCMが最も大きいことがわかりました。また、テレビCMの貢献度のうち波及効果は45%を占め、直接効果の可視化だけでは過小評価してしまっていたテレビCMの実際の貢献度を定量的に示すことに成功しました。

結果、テレビCMの出稿継続に向けた定量的根拠を得ることができ、経営層に説明することができました。

経営層へのテレビCMの費用対効果の説明に活用した事例/日用品販売企業

ある日用品販売企業のマーケティング責任者は、経営層にテレビCMの費用対効果を定量的に説明することに苦心していました。

この企業では、購入時のきっかけとなった媒体の調査を通して各施策の効果測定を実施していました。その調査によると、SNS広告や口コミなどパーチェスファネルのボトムにあると想定される施策や要因がより評価される傾向がありました。そのため、アッパーファネルに位置するテレビCMの費用対効果を説明するためには、ミドルファネル以降の施策に与える波及効果までを含めた、効果測定が必要という考えに至りました。

そこで、MAGELLANを用いてテレビCMを始めとしたマーケティング施策の効果の可視化に取り組みます。

分析の結果、テレビCMの費用対効果が、調査で測定した場合と比較し55%良いことが判明しました。より正確なテレビCMの効果測定に成功し、これを経営層への説明材料とすることができました。最終的に、次年度にテレビCMの予算を増額するという意思決定にも繋がりました。

波及効果まで含めたテレビCMの効果分析で、より確信を持った意思決定を

ここまで、MMMによって明らかとなったテレビCMの波及効果の大きさと、波及効果を分析するメリット、分析を実践した事例を見てきました。

テレビCMの効果は、商品の認知を高め直接的に顧客を購買やコンバージョンに導くのみに留まりません。パーチェスファネルにおいて受け皿となる施策に対しても影響を与え、購買やコンバージョンをアシストする役割も持ち併せます。そのため、直接効果だけではなく波及効果まで含めたテレビCMの効果測定を実施することで、より確信を持ったテレビCM出稿の意思決定を行うことができるのです。

波及効果を含めたテレビCMの効果測定には、データサイエンスを用いて高度な分析を実現するMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)ツールが最適です。MMMであれば、Cookieでは測定困難なオフライン広告を起点として発生した購買やコンバージョンを定量化します。

※1)Fuji Television Network, Inc. (2021). TVCM DATA Analysis 「テレビCMの本当の広告効果を可視化する」

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