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2023年6月22日

マーケティング効果可視化における最適な分析手法とは?企業が選択すべき分析手法のポイント解説

XICA Analysis Insight

前回のレポート(※1)では、「データ収集」の重要性について述べてきました。本レポートでは、マーケティング効果可視化において分析手法をどのように選択するべきかについて述べていきます。

企業が取得できるデータの多様化に伴い、分析手法のフレームワークも多様化しています。現時点での最適な分析手法が分からず、結果データドリブンな意思決定に踏み込めずにいる企業も多数あるのではないでしょうか。今回のレポートでは、一般的にマーケティング効果可視化における分析手法にはどのようなものがあり、何を考慮して選択するべきか、を中心に述べていきます。

(※1)前回のレポート:データ収集のベストプラクティス:クライアントとの伴走で得た知見をご紹介

分析手法選択のプロセス

分析手法の選択が正しいプロセスを踏めていない場合、せっかく時間と労力をかけて分析結果が出てきたとしても、「何を知りたかったんだっけ?」・「活用に落とし込めない…」という状況に陥りがちです。耳にタコができるほど言われていることですが、流行りの分析手法を焦って取り入れる・闇雲に分析ツールを導入する前に、前回のレポート(※1)でも述べた通り何のための分析なのかを明らかにしたうえで分析手法を選択するべきです。

以下は弊社が推奨する『データ収集プロセスの流れ』ですが、①分析目的の合意形成の後に②分析目的に合わせたモデルの設計を行うプロセスが入っています。

データ収集プロセスの流れの図

分析目的に合わせた分析手法の選択と言っても、それだけで「どのような分析手法を選択するべきか」のベストな選択をすることは難しいです。上記の他に考慮すべき制約をここから述べていきます。

分析手法選択における制約

具体的に分析手法を選択するうえで考慮するべきなのは、以下3つの制約です。

  1. 工数による制約

データ分析結果の精度とかかる工数は基本的に比例するものです。精度をあげるためには、分析モデルに関わる要因(変数)の収集範囲を広げるか、分析モデルから算出される各種パラメータ・結果を確認し分析モデルの調整を地道に行っていく必要があります。

ビジネス活用観点においては、納期も重要な観点になります。スケジュールとかけられる工数を考慮したうえで費用対効果も考える必要があるため、プロジェクトメンバーの稼働時間を見積もったうえで現実的な分析モデルを選択しましょう。

  1. 分析ノウハウ(スキル)による制約

データ分析手法によっては、Excelで簡単に進行できるものもあれば、非常に専門性の高い分析手法(プログラミングが必要・数学的な知識が必要・etc…)が存在します。プロジェクトに携わるメンバーが、一度も経験がない分析手法を選択することは難しいでしょう。工数による制約と同様、プロジェクトメンバーや社内の知見を基に現実的な手法を選択できるよう心がけましょう。

  1. データ収集可能性による制約

分析モデルに関わる要因(変数)の洗い出しにおいて、構築した分析モデルに必要不可欠なデータが収集できず、合意した分析目的が達成できなくなることもあります。分析手法選択の際には、それを基にした分析モデルに関わる重要なデータが取得可能かどうか、といった観点も考慮しながら進行すると効率的に進行することができます。不可能であれば、該当データを取得せずに進行できる分析手法を選択するか、再度分析目的の合意のフェーズに立ち返る必要があります。特に、Cookieデータは直近で個人情報保護の観点から規制が厳しくなっており、データ収集可能性の議論の際には注意が必要になります。

合意した本来の分析目的を達成するために上記制約を乗り越えることが不可欠である場合は、データ分析を専門とする外部に頼るという手もあります。工数による制約・分析ノウハウによる制約は回避できるケースがあります。また、データ収集可能性による制約もファーストパーティーデータでなければ、外部リソースを活用することで入手可能なことがあるため、特定のデータを収集しているサービスに頼るのも一つの手になります。

また、これらはマーケティング効果可視化分析に限らず、分析プロジェクトの進行に当たっては必ず考慮すべき内容になります。

マーケティング効果可視化における分析手法

マーケティングに関わる分析手法は多岐にわたります。そのため、今回は論点をマーケティング効果可視化に絞ったうえで、それぞれの分析手法の活用事例と特徴を述べていきます。また、以下に記したものはマーケティング効果可視化の一般的な手法であり、全ての手法を網羅しているわけではない点をご了承ください。

1. A/Bテスト

  • 工数:★ 
  • スキル:★ 
  • データ収集の難易度:★

※★が多いほど、制約・難易度が高い内容になります。以下同様。

A/Bテストの図

マーケティング効果可視化において、最もよく使われており、手軽でかつ強力な手法と言えるでしょう。あるマーケティング活動を実施した対象者(介入群)と実施しない対象者(対照群)の差分を見ることで効果を可視化する方法です。介入群と対照群ができるだけ等質になるようにすること・標本(サンプル)の数を一定確保することに注意できれば、高速でPDCAを回すことができます。イメージしやすい例は、オーガニックサイトのページデザインの変更などでしょう。ページデザインの変更を施したユーザー(介入群)とそうでないユーザー(非介入群)の差分を見ることで、ページデザインの変更に効果があったのか、を判断することができます。

具体的に介入することで成果が得られたかどうかは、仮説検定を行い判断することが一般的です。ただし、A/Bテストは万能ではなく、「個人データが存在し、実験的に実践できるマーケティング活動しか対象にならない」というマーケティング活動の効果可視化においては決定的な弱点があります。

例えば、TVCMの効果など個人データを追えないマーケティング活動の効果測定をA/Bテストで実施することは難しいでしょう。また、マーケティング戦略の大きな変更、具体的には新商品の発売や価格変更などの影響は、一部の顧客をトレースし続ける必要性があり、かつ一部の顧客のみに適用することが難しく、A/Bテストが不向きとしている領域です。

2. DID(差分の差分法)

  • 工数:★★
  • スキル:★★
  • データ収集の難易度:★
DID(差分の差分法)の図

A/Bテストの発展として、DID(差分の差分法)というものもあります。介入群と介入無し群の間で、マーケティング施策実施前後の売上差分を比較し、マーケティング施策実施による効果を可視化します。エリアを分けて実験的にTVCMを実施するなどすれば、先ほど述べた個人データを追わずとも、マーケティング施策による効果を可視化することができます。

一方で、調査対象のマーケティング施策を実施する以外の時系列のトレンドが変わらないという仮定を置く必要があり、「調査対象マーケティング施策を実施する以外の時系列のトレンドが変わらない」という条件をクリアするような事例を見つけることは難しく、厳密に行うには専門的なスキルを以て実験の設計から行っていく必要があり、なかなか手軽にできるものではありません。

3. MTA(マルチタッチアトリビューション)

  • 工数:★
  • スキル:★
  • データ収集の難易度:★★
MTA(マルチタッチアトリビューション)の図

こちらも今や定番となった手法と言えます。Cookieやピクセルの技術を利用することで、顧客行動をリアルタイムで追跡する手法です。かなり細かい単位で、かつリアルタイムでデータを取得・確認できるため、データを見るだけでも参考になる情報が多く含まれています。例えば、売上をコンバージョン指標においていれば、特定の分析を必要とせずにROASを測定することができるため、マーケティング効果可視化においては非常に強力なツールと言えるでしょう。

ただし、MTAにおいても「個人データ」が肝になるため、TVCMの効果可視化や先ほど述べたような新商品の発売・価格変更の影響などを解明することは難しいです。また、最近ではCookieに対する規制が厳しく、一部のデータが欠損してしまう可能性があります。また、ツールの導入が必須となるため費用が一定かかってしまうことがデメリットとしてあげられるでしょう。

4. 回帰分析

  • 工数:★★
  • スキル:★★
  • データ収集の難易度:★★
回帰分析の図

こちらもマーケティング効果の可視化においてよく使われてきた手法です。売上データを目的変数におき、マーケティング活動に関わるデータを説明変数として回帰分析することで、あるマーケティング活動がどれだけ売上に貢献していたかを推計する、などの方法で使われることが多いです。説明変数が一つの場合は単回帰分析、複数の説明変数がある際には重回帰分析となります。ある程度の統計的知識が必要ですが、実行自体はExcelでもできるため比較的手軽な手法と言えます。

先ほどまで述べてきたA/BテストやMTAとは異なり、個人データを必要とせず時系列的な変動を追うことができるため、TVCMの効果測定やマーケティング戦略の変更による影響を可視化することにも応用が効きます。

一方で、特に時系列データの回帰分析では「見せかけの回帰」に注意する必要があります。分析モデルから統計的に算出されるパラメータが「マーケティング活動の効果あり」という結果になっていたとしても、時系列データの持つ特徴によって生み出された「見せかけの効果」である可能性があります。

 他にも、重回帰分析の際にはマルチコ(多重共線性)の問題があることや、必要なデータ数の確保など、高い精度を追い求めていくと専門的な知識が必要となってきます。

5. MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の図

記に述べた回帰分析のような様々な統計手法を駆使し、最終KPIに至るまでに各要因(マーケティング施策・外的な要因を含む)がどのように影響しているのかを可視化することができる分析です。個人データを必要としないため、TVCMの効果測定やマーケティング戦略の変更による影響・外的な要因による影響(景気変動や市場トレンドの変化)を統合的に追うことができます。データが取得可能なマーケティング施策については、外部要因による影響や各広告同士の影響を複合的に可視化できるため、包括的な予算配分や上流のマーケティング戦略の決定にも応用できる、非常に強力な分析手法です。

一方で、複合的なモデルを処理できる統計的な知識だけでなく、マーケティング仮説を正しく反映した分析モデルを構築しなければならないため、統計知識・業界知識・マーケティングに関する知見など多岐にわたるスキルが必要となります。また、非常に大掛かりな手法になるため細かい変動を追うにはコストパフォーマンスが悪く、例えばオーガニックサイトのページデザインの変更などの効果はMMMで測定するよりもA/Bテストで測定することを推奨されるケースが多いです。

これまで述べてきた分析手法はマーケティング効果可視化における分析手法の一部ではありますが、強力かつ汎用性の高い内容になっています。分析目的や対象となるマーケティング施策によって、適切な効果可視化の手段は異なりますので、必要となる工数や特性に見合った分析手法を選択しましょう。

まとめ

マーケティング効果可視化の仕組みを整えることで、非常に強力なPDCAサイクルを回すことができます。よりハイレベルな目標を達成するためにも、その礎となる分析手法の選択は、考慮するべきポイントをしっかりと踏まえたうえで、よりよいものを選択するべきでしょう。

マーケティングPDCAの図
  • 分析手法の選択においては、目的・3つの制約(工数・スキル・データ)を考慮したうえで選択すると良い
  • マーケティング効果可視化の分析手法は多岐にわたるが、一般的に以下の5つがある
    • A/Bテスト
    • DID(差分の差分法)
    • MTA(マルチタッチアトリビューション)
    • 回帰分析
    • MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)
  • マーケティング効果可視化の仕組みを整えることで、よりハイレベルな目標を達成できるようになる

オンオフ統合分析で継続的に獲得効率を把握し、最も効果的なマーケティング運用を

次回以降は、具体的なマーケティング効果可視化におけるデータ分析の手法について解説する予定です。

サイカのMMMソリューション

弊社サイカは、マーケティングにおけるデータサイエンス領域で10年以上、コンサルティングおよびサービス提供を行っています。なかでも、自社開発のMMMソリューション(MAGELLAN)を通じて、大手企業を中心に230社以上の支援実績もあります。

専門のデータサイエンティストとコンサルタントが、クライアント企業のニーズと目的に応じたMMMの最適な活用、更にはマーケティング効果の最大化をサポートします是非この機会に、MAGELLANを活用した業界別の事例もご一読ください。

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